「困ったなぁ。」


ぽつりとタケルが呟いた言葉に、ヒカリは顔をあげた。あおいふたつの瞳が真っ直ぐヒカリを見つめていて、ヒカリは首を傾げた。


「どうしたの?」


尋ねたヒカリに、タケルは僅かに眉を下げ、


「僕、ヒカリちゃんが大好きだよ。」


と呟いた。
ヒカリはますます首を傾げて、


「私も大好きよ、タケルくんのこと。」


と言った。


「そうだよねぇ。」
「そうよ。」


今度はタケルが首を傾げて、うーん、と唸った。
それから、首を横にふって、


「ありがと。帰ろっか。」


と微笑んで、立ち上がった。


「うん。」


ヒカリも笑って、立ち上がる。
ふたり並んで、タケルがヒカリの方に手を伸ばした。


「手、繋がない?」
「なんか今日のタケルくん、ヘンよ。」


ヒカリが首を傾げると、タケルはうーん、とまた唸る。その様子にヒカリは笑って、


「いいわよ。なんか懐かしいね。」


と言ってタケルの、今では自分よりも大きくなった手を握る。
真っ直ぐ伸びた影の、一部がくっついて、揺れる。


夕陽は沈み、夜が迫っていた。





のびゆく影の途中





彼らはまだ、幸福な子どもたちのまま。