「イーピン。」 めのまえの、よるのようにくらくてふかいかみとひとみのおとこのひとは、とてもうれしそうに、にこにこしながらわたしのなまえをよんだ。 うつむいていたかおをあげると、そのひとはながいゆびさきを、おおきなてのひらを、わたしのほうにのばした。 そのままやさしくわたしのあたまをなでて、 「すべすべ。」 とくすりとわらった。 わたしはなんだかはずかしくなって、つるつるのあたまをおさえてすこしうしろにさがった。 それをみたそのひとは、いっしゅんきょとんとしてから、ちいさくわらって、 「ごめんごめん。でも、僕は好きだよ。」 といった。 わたしはさいごのほうの、ふたもじにはんのうして、いっきにかおがまっかになった。 たぶん、くびから、かみのけののこってるとこまで、まっかに。 「ほんと、かわいい。」 くちかどをあげて、そのひとはわたしをだきあげた。 わたしはひっ、とちいさく声をもらして、それでもあばれるでもなくおとなしくされるがままにした。 あぐらをかいたそのひとは、わたしをそのちゅうしんにおくと、まんぞくそうにほほえんだ。 あたまにふれたゆびさきはつめたかったけれど、せなかにあたるそのひとのおなかはあたたかくて、なんだかほっとした。 「ねえ、イーピン。」 くるくるとわたしのべんぱつをいじくりながら、そのひとはわたしをよんだ。 なんですか、とあいづちをかえすつもりで、わたしはそのひとのほうをみる。そのひとはにこりとわらって、 「君は雲雀が好きかい?」 ときいてきた。 わたしはまたほほにねつがあつまるのをかんじて、へんなあせがでてきて、したをむいてしまった。 このひとのきく雲雀、というのは、とりの雲雀ではなく、あの、雲雀さんをさすのだ。 どうしてこのひとが雲雀さんのことをしっているのか、わたしのきもちをしっているのか、わからないけれど、このひとはときどき、おもいだしたかのようにわたしにきいてくる。 雲雀は好きかい コロコロとしたのうえでころがすように、かろやかに。 わたしがちいさくうなずけば、そのひとはまんぞくそうにわらうのだ。 「イーピン。」 ばくはつをおこさないように、ひたすらしたをむいてだんまりこむわたしのあたまをそのひとはなでる。 ふしぎなひとだ。このひとは。 するどいめをしているのに、やさしくてあたたかなふんいきがとりまいていて、とてもあんしんする。 雲雀さん。 ぽろりと口からこぼれたそのおとに、わたしはあわててくちにてをあてた。だらだらといやなあせがでてきて、ああほんとうに、ばくはつしてしまいそう。 そろそろとそのひとのほうをみると、そのひとはわたしのあたまをなでていたてをぴたりととめて、わずかにめをみひらいてわたしをみていた。 「あ、う…。」 わたしのうめきごえに、そのひとはゆっくりとはんのうして、わたしのはなにじぶんのはなをくっつけた。 「僕も好きだよ。」 それがどこにむけられたものかはよくわからなかったけれど、かちりとわたしのカウントダウンがはじまってしまったことはたしかで、わたしがけむりにつつまれたこともたしかで、つぎのしゅんかんにはわたしをかかえてあたふたするツナさんがいたことも、たしか。 うれしそうにわらったそのひとに、雲雀さんにちかいおもいをいだいたことも、きっと、たしか。 |