ぱさりと瞼に被さった前髪を横に流す。ぽかぽかとしたぬるく優しい空気の今日は絶好の昼寝日和。暖められた地面がじんわり背中に染みて、心地よい。
時折さわさわと草木を揺らす風が、伸びた前髪を掠めて目の前に被せるけれど、ぼんやりと眠気を含んだ頭では、それもあまり気にならない。
どこからか流れてくる甘い匂いが鼻腔をくすぐって、包み込むような陽の光があたたかく、目を細める。目にかかる金色の前髪越しの世界はきらきらと輝いていて、己の髪ながら少し感嘆した。


「んでっ!」


急につむじあたりの髪の毛がぴん、と引っ張られ、驚いて背中が微かに浮いた。


「何すんだ、コラ。」
「油断していただろう。」


軍人失格だぞ、と言う、髪を引っ張った張本人、ラルは、いつものように口元を締めてオレを見つめている。けれど再び地面に吸い寄せられた背中は、溶けてくっついたかのように離れなかったので、取り敢えず笑っておいた。


ゆるい風が二人を撫でる。前髪がさらわれて、目の前で揺れる。まるで木漏れ日が揺れるようにちらちらと光が揺れて、ますます目を細めた。


「コロネロ。」


ラルが動く気配がして、寝転がる自分の顔を覗き込んだ。ふわり、彼女の長い髪が揺れる。重力に従って垂れた髪が、囲うように周りで揺れて、金の自分の髪とは違った光が見えた。ふたつの光がくっつきあって、思わず口元を緩めた。


「ラル、」


そうっと手をのばせば、いぶかしそうな彼女の顔。白い歯をにかりと見せれば、彼女の締まった口元が少し開かれた。何か言われる前に、オレは早口で言葉を発する。


「光が溶けたぜ。」


溶け合う光をうつす瞳のなかの彼女は、静かにオレの頭をはたいた。




透通ればきみ



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